未来を支える子どもは、こうして育つ。

師範のひとり言

第5回全日本少年少女空手道選抜大会。
今回は監督として、その舞台に立っています。

全国各地の地区予選を勝ち上がった強豪選手たちだけが集い、
「日本一」を目指して熾烈な闘いを繰り広げる二日間です。

昨今、勝利至上主義の風潮や、行き過ぎた指導、いわゆる“スポハラ”が取りざたされる中で、この全国大会の舞台に立ち、私が感じたのは——

芯から清々しい空気でした。

選手も、指導者も、審判員も、運営に携わる方々も、皆が真剣で真っ向勝負。
まさに「正々堂々」という言葉がふさわしい大会です。

開会式では大会会長より、こんな言葉がありました。

「未来を担う子ども達を、指導者はもとより、審判員、運営の皆様方がしっかりと成長をサポートしてもらいたい。」

この言葉を聞いた瞬間、強く胸を打たれました。

ここはまさに、“未来を担う子ども達”が大きく成長する舞台なのだと。

武道やスポーツの全国大会は、誰もが立てる場所ではありません。
高校野球で言えば、各都道府県からわずか一校のみが出場できる、あの狭き門と同じです。

選ばれし者たちが集う舞台。

なぜ、このような舞台が子ども達を大きく成長させるのか——

これまで15年以上、毎年全国大会の現場を見続けてきた空手道師範の私が、僭越ながら語ってみたいと思います。

いつもながら、師範の勝手なひとり言として、お付き合いいただければ幸いです。

この舞台に立てたこと自体が、すでに成長である

日本一を決定する全国大会に出場できる選手は、ほんの一握りです。
実力がなければ、この舞台に立つことは叶いません。

この大舞台を夢見て、日々努力を重ねてきた子どもたち。
そこには、良き指導者の的確な導きと、保護者の絶大なる支えが必ず存在しています。

つまり、この舞台に立っている子ども達は、大人の“力”をしっかりと受けながら成長してきたということです。

それは、行き過ぎた指導やパワハラとはまったく異なるものです。
会場に満ちていたのは、芯の通った、あたたかく、そして熱い熱量でした。

その熱量こそが、子ども達の“力”を大きく育てているのではないでしょうか。

もし、良き指導者に恵まれず、
もし、保護者が子どもの目標に無関心であったなら——

この大舞台に立つことは、きっと難しかったでしょう。

この場にいる子ども達は皆、
指導者や親御さんの持てる力を受け取りながら、
一歩一歩、成長を積み重ねてきたのです。

全国大会に出場する子ども達は、
“ただ強い”のではありません。

多くの大人に支えられ、
多くの教えを受け、
多くの経験を重ねてきた存在なのです。

スポーツ以外で、これほどまでに大人と子どもの距離が近く、
同じ目標に向かって心を重ねるものがあるでしょうか。

スポーツは、技術以上に、人を育てるもの。

私は改めて、そう感じました。

本気の舞台が、人を育てる

今回の全国大会で、
優勝候補と目されていた選手が、まさかの初戦敗退となる瞬間を目の前で観ました。

幾度となく日本一を経験してきた“その子”が、初戦で敗れる——。

会場はどよめき、勝利した選手と監督は歓喜に沸きました。
その対照的な光景が、強く印象に残っています。

試合終了後、その選手は監督のもとへ戻り、
大粒の涙を流していました。

その涙を、監督は黙って受け止め、力強く抱きしめていました。

叱責ではなく、
言い訳でもなく、
ただ包み込むような深い愛情。

その姿を見て、私は思いました。

この子は、この指導者のもとで、
技だけでなく、人として育ってきたのだと。

日本一を決める舞台は、
全員の熱量が「本気」です。

本気と本気がぶつかるとき、
そこに生まれる経験は、日常とは桁違いの密度を持ちます。

技術の差だけではありません。
覚悟と覚悟がぶつかるのです。

だからこそ、
たとえ敗れたとしても、その経験は決して“失敗”ではありません。

負けられない闘い。
それでも、負けることはある。

しかし——

本気で挑み、本気で悔し涙を流す経験は、
子どもを一段、二段と大人へ近づけます。

あの涙の一粒一粒は、
成長の証そのものです。

全国大会という大舞台は、
卓越した者同士が触れ合うことで、
日常では決して得られない学びをもたらします。

そしてその経験こそが、
未来を支える子ども達を、本物へと鍛えていくのです。

さいごに

ごく僅かな選手しか立つことが許されない舞台――全国大会。

だからこそ、その魅力に惹かれた者同士が本気でぶつかり合い、
互いに高め合い、成長していくのだと思います。

しかし。

その舞台に立てなければ、成長できないのか――
私は、そうは思いません。

未来を担う子ども達を成長させる一番の要因は、
実は、とてもシンプルなものです。

良き指導者のもとで学ぶこと。
そして、親御さんの絶大なる理解と応援があること。

この二つがあれば、子どもは必ず伸びます。

全国大会が目標でなくてもいいのです。

指導者と保護者の大きな愛情に包まれていれば、
未来を支える力は確実に育っていきます。

古賀道場では、「力」を育てています。

集中力。
判断力。
分析力。
思考力。
想像力。
忍耐力。
精神力。
その他いろいろな力があります。

そして、学力もその一つです。

しかし――

人が自分らしく生きていくために本当に必要な力は、
短期間では育ちません。

環境が大事です。
良き人との出会いが大事です。
何より、お父さん、お母さんの理解が大切です。

今の子ども達の有限な時間の多くは、「学力」を上げることに費やされています。

けれども、学力は、それだけでは機能しません。

生きていくために必要な様々な「力」があってこそ、
学びは本当の意味を持つのではないでしょうか。

未来を担う子ども達に、
どんな力を育ててあげたいのか。

それを考えることこそ、
私たち大人の役割なのだと思います。



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