日本の英語教育はどこへ向かう?――点数から心の通う英語へ 日本の英語教育を考えるコラム

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日本で本格的に英語教育が始まって、すでに約30年。
今ではかなり高レベルな英語教育が行われているにもかかわらず——
不思議に思いませんか?
なぜ日本では、英語を第二言語のように使いこなす人がこんなにも少ないのか。

諸外国に目を向けると、多くの国では英語が世界共通語として自然に使われています。
国境を隔てて隣り合う国々では、当然ながら母国語が異なるため、英語を使ってコミュニケーションを取るのが当たり前。
けれど、日本では島国という環境もあり、英語で話す必要のない日常が今でも続いています。

では――日本において英語学習は本当に必要ないのでしょうか?
日本で英語を学ぶ目的とは何なのか?
そして、親が子どもに英語教育を求める「本当の理由」とは?

今回は、長年にわたり英語講師として子どもたちの成長を見つめてきた
古賀英語道場のカトリーヌ祥子先生に、
今の日本の英語教育が抱える課題、そしてこれから日本が目指すべき英語教育の姿について伺いました。

古賀英語道場 主任講師 カトリーヌ 祥子先生

英語教育へのニーズの変化

今回取材をさせていただいたのは、佐賀市高木町にある古賀英語道場
ここでは、幼児から大人まで、幅広い年代の生徒さんがレッスンを受けています。

英語学習を始める年齢としては、やはり小学校低学年が最も多いそうです。
「この時期の親御さんの多くは、お子さんに“英語を体験させたい”という気持ちが強いですね。
英語を身近に感じてもらい、楽しみながら親しんでもらいたい——そんな願いが多いんです。」
と、カトリーヌ先生は話します。

そもそも英語とは、コミュニケーションのための言語
世界中の人と心を通わせることができる、唯一の“世界共通語”です。
「英語を話せるようになった方がいい」と多くの人が思うのも当然のこと。
だからこそ、英語を学び始めるのです。

しかし——。
学年が上がり、小学校高学年になる頃から、英語を学ぶ目的が少しずつ変わっていきます。
“英語に触れて楽しむ”ことが目的だった学習が、
「受験」というキーワードの登場によって、“点数を取るための英語”へと変化していくのです。

「点数を取ることを目的とした学習が始まると、“会話ができるようになるため”の英語から離れていくんです。」
と、カトリーヌ先生は静かに語ります。

日本の英語学習の目的とは?

現在では、英語が話せなくても気軽に海外へ行ける時代になりました。
翻訳アプリやAIの発達により、海外旅行を楽しむうえで困ることはほとんどありません。

道を尋ねたい時も、翻訳アプリがあれば問題なく伝えることができます。
レストランでの注文もスムーズに行えます。
つまり、「困らない程度の英語」なら、もう必要ない時代になったのかもしれません。

けれど――。
海外で心の通う友達をつくることは、翻訳アプリではできません。

長く海外で生活をされてきたカトリーヌ先生は、こう話します。

「言葉とは、思いを相手に伝えるためのとても大切なものです。
血の通った“その人自身の言葉”でなければ、相手の心には届かないのです。」

日本語でも、伝えたつもりが正確に伝わらないことがあります。
それを母国語ではない英語で伝えるのは、なおさら難しいこと。
でも、カトリーヌ先生は続けます。

「知っている単語や文法が少なくても、“伝えたい”という気持ちがあれば、案外伝わるものなんです。」

そんなエピソードがあります。
ある小学生の生徒さんは、ネットで知り合った海外の友達と英語で楽しく会話をしていました。
ところが、中学生になり“本格的な英語学習”が始まると、
以前のようにうまく話せなくなってしまったのです。

理由は明確でした。
これまで“気持ち”で伝えていた英語が、知識を詰め込む学習によって、
「間違えてはいけない」「正しく言わなければ」という意識に変わったからです。

「日本人が英語の知識はあるのに、会話になると話せなくなるのは、
テスト中心の“〇か×か”で評価される英語教育の影響なんです。」

と、カトリーヌ先生は指摘します。

英語はまず、インプット(取り込むこと)がとても重要です。
そして、次に重要なのは、アウトプット(使うこと)
取り込んだもの(インプット)を、実際に使うこと(アウトプット)で確実に身についていきます。
日本の英語教育では、このアウトプットの機会が“テストの答案用紙”に限られているため、
「話す力」が育たないのです。

言語とは文化そのもの

世界には、国連加盟国だけでも193か国あり、
その国々で使われている言語は、なんと7,000種類にも及ぶと言われています。

つまり、言語の数だけ文化が存在するということです。
それぞれの国の文化は、その国の言葉によって形づくられてきた――
そう考えると、言語そのものが文化だと言っても過言ではありません。

その国の言葉を学ぼうとすることは、すなわちその国の文化を学ぶということ。
私たちは世界の中で共に生きながらも、どこか遠い存在のように感じがちです。
けれど、実際には世界は驚くほど近く、そして身近なものになっています。

特に近年では、SNSの普及によって海外との距離が一気に縮まりました。
言語を通して文化を知ること、そして理解し合うことは、
いまや国境を越えて生きる私たち全員に求められている学びなのかもしれません。

そう考えると、世界共通語である英語を学ぶことは、
単にスキルを得るためではなく、
「地球人」として他の文化を理解し、共存していくための学びだと言えるでしょう。

まとめ

今の日本には、世界中から多くの人々が訪れ、
街を歩けば外国の方の姿を見かけるのも珍しくなくなりました。

日本には日本の文化があり、海外から来た人々にもそれぞれの国の文化があります。
その人たちがこの日本で共に暮らすということは、お互いの文化が共存するということです。

文化の中には、食や生活習慣、宗教など、さまざまな価値観があります。
この文化の違いを「隔たり」とせずに分かり合うことこそが大切です。
そして、そのためには「通じ合う言葉」が必要になります。

言葉が違えば、思いも伝わりません。
だからこそ、英語という共通の言語が必要なのです。
英語で会話をするということは、母国語ではなくお互いの“第二言語”を使って相手に歩み寄るという行為。
それは、相手への尊重の表れでもあります。

そう考えると、今の日本人はまだまだ世界の中では英語面で遅れを取っているのかもしれません。
日本語だけで不自由なく暮らせた時代は、もう過去のものになりつつあります。
これからの日本は、国際化がさらに進み、英語が話せないと困る社会が当たり前になるかもしれません。

自然と海外の友達ができ、
悩みを相談し合い、
夢を語り合える――
そんな社会が、きっともうすぐそこまで来ています。

英語とは、受験のためでも、点数を取るためでも、資格を得るためでもありません。
それは、大切な人に寄り添い、心を通わせるための「ことば」です。


最後に、カトリーヌ先生がこう語ってくださいました。

「私たちが住む日本は、本当に小さな国です。
日本から見えている世界は、ほんの一部に過ぎません。
地球はもっともっと広く、さまざまな価値観や文化、習慣が息づいています。
私たちは同じ地球に住む“地球人”として、違いを尊重し、認め合うことがとても大切だと思います。
ここで英語(地球語)を学ぶ子どもたちには、文化を分かち合うためのツールとして、英語を学び、実際に世界を体験してほしいと思います。」

その言葉の中に、これからの日本の英語教育が進むべき方向が見えたような気がしました。
英語を通して「世界を近くに感じる力」を育てる――
それこそが、古賀英語道場が描く明るい未来の英語教育です。

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