古賀道場では、出来ないことを出来るようになる例えとして、よく「自転車に乗れるようになること」を話します。
自転車は、乗れるようになるまでは、とても難しいものに感じます。
何度も転び、「本当に乗れるようになるのかな」と思うこともあるでしょう。
しかし、いざ乗れるようになると、どうでしょう。
今までの苦労が嘘のように、当たり前のようにスイスイ乗れるようになります。
そして一度乗れてしまえば、不思議なことに、もう乗れなくなることはありません。
自分ではどうやって乗っているのか説明できなくても、自然と体が覚えているのです。
自転車に乗れるようになった人の共通点は、ただ一つ。
「乗れるようになるまで練習した」ということです。

今回は、子ども達の「出来ない」を「出来た」に変えるために、古賀道場で実際に行っている稽古方法についてお話してみたいと思います。
いつも通り、師範のただのひとり言として、気楽に読んでいただければ幸いです。
出来ないことを出来るようになるが練習
なかなか上達しない子ども達には、ある共通点があります。
それは、稽古に来て「ただメニューをこなしている」ことです。
なぜ上達しないのか。
それは、そこに明確な目的がないからです。
例えば、すでに出来ていることを、いくらたくさん練習しても、大きな成長にはつながりません。
上達を妨げているのは、「まだ出来ていないこと」があるからです。
道場では、子ども達によくこんな質問をします。
「今日はここに何をしに来たの?」
空手衣を着て道場に来ているのだから、当然
「空手の稽古をしに来ました。」
という答えが返ってきます。
しかし古賀道場では、この答えは0点だと伝えています。
「空手の稽古をしに来た」というのは、当たり前のことだからです。
私たちが引き出したい答えは、
その日の稽古の目標です。
例えば、
「僕はいつも引手を注意されるので、今日は引手を直す練習をしに来ました。」
「私は突きが下から出ることが多いので、それを意識して練習します。」
このように、それぞれが明確な目的を持って取り組むことが大切だと伝えています。
道場の稽古メニューは、全員同じです。
しかし、
子ども達一人ひとりが取り組んでいる練習は、本当は全く違うものなのです。
それが分からないまま、号令に合わせて、どれだけ一生懸命に同じメニューをこなしても、大きな上達にはつながりにくい。
私はそう思っています。
上達とは何か。
それは――
出来ないことが、出来るようになること。
それが「練習」だと、私は思っています。

できない!が上達の始まり
一概に「突きを上達させる」と言っても、いい突きを突くためには、いくつもの条件が揃わなければなりません。
例えば、先ほどの
「突きが下から出る」
「引手を注意される」
ということも、なぜそうなってしまうのか、その原因を見つけることが大切です。
いい突きを突くためには、
- 腰の練り
- 呼吸
- タイミング
- 脱力
- 力み
などなど、さまざまな要素が関わっています。
つまり、いい突きを邪魔している要因は、人それぞれ違うということです。
必要なことが出来ていない場合もあれば、余計な動きをしてしまっている場合もあります。
だからこそ、まず大切なのは
出来ていないところを見つけることです。
私はこれこそが、指導者の役割だと思っています。
人は意外と、自分のことがよく分からないものです。
客観的に自分を見ることが出来れば理想ですが、それは簡単なことではありません。
だからこそ指導者は、その子の「出来ない原因」を見つけて、伝えてあげる必要があります。
それは上達するうえで、とても重要なことだと思います。
そして「出来ない」が見つかったなら、
あとはそこを「出来る」に変える努力をするだけです。
出来ないことが見つかる。
それこそが、上達の始まりなのです。

出来ない!と向き合う覚悟
「できない!」が見つかれば、それを「できる!」に変える努力をすればいい。
言葉にすると簡単ですが、これがなかなか簡単ではありません。
まず、出来ないことを出来るようにする練習は、とてもきつく、面白くありません。
なぜなら、出来ないのですから。
楽しくもない練習を、出来るようになるまで続ける。
これは、なかなかしんどいことです。
人はどうしても、自分の出来ないことから目を背けたくなります。
だからこそ、本当に向き合うべき「出来ない」を避けてしまい、的外れな練習をしてしまうこともあります。
だから私は、子ども達にこう伝えています。
とにかく、出来ない自分と向き合いなさい。
そして、見つかった「できない!」は、
出来るだけ早く「できた!」にしなさい。

先ほどの自転車の話で考えてみてください。
乗れるようになるまでは、本当に難しく感じます。
その日の練習で乗れるようになれず、日が暮れて次の日に持ち越す。
すると、自転車に乗ることが、さらに難しいことのように感じてしまいます。
次の日も乗れない。
また次の日も乗れない。
そうなると、もう自転車に乗れる気がしなくなってしまうものです。
でも実際には、出来ないことというのは、
出来てしまえば案外なんてことないものです。
あんなに難しく感じていたのに、出来てしまえば、もう難しいとは感じなくなります。
大事なのは、
今の「できない!」としっかり向き合い、
それを出来るだけ早く「できた!」に変えること。
結局のところ、
自転車に乗れるのは、
乗れるようになるまで練習を続けたから。
ただ、それだけのことなのです。
さいごに
上達が遅い子たちには、ある共通点があります。
それは、
出来ないことをそのままにしてしまうことです。
道場に来た時には、その練習に励みます。
しかし出来ないまま稽古を終え、出来ないまま次の稽古の日を迎える。
そしてまた同じことを繰り返してしまいます。
今出来ないことが出来るようにならないままでは、次の「出来ない」も見つけることが出来ません。
結果として、上達が止まってしまうのです。
また別のケースでは、出来ないことだけがたくさん見つかり、どれも出来るに変えられないまま、出来ないばかりが増えてしまうこともあります。
そうなると、最初に見つかった「出来ない」が、だんだん見えなくなってしまいます。
これは空手道に限らず、子ども達を取り巻く多くのことに当てはまるのではないでしょうか。
出来ないことは、細かく分けていくことで、
案外簡単に「出来た!」に変えられるものです。
何が出来ないのか分からないまま、漠然と取り組むよりも、ずっと効率の良い方法だと思います。
もしあなたのお子様が、何か出来ないことで悩んでいるなら、
何が原因で出来ないのか。
そして、
それをどれだけ細かくして考えられるか。
そこに、良い指導のヒントがあるのかもしれません。

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