といといといの森Vol.6|タダでおカネをやると思うなよ!!!

細川 亮のといといといの森

佐賀の駅前に、ひとつの「おカネ箱」がある。出し入れ自由、実験中。今日もそこに、品のある御婦人と、腹を減らした高校生がやってきた。意地悪な質問と、正直な欲望と、1000円の巡り。


品のある御婦人の問いかけ

「お話し掛けてもいいかしら?」
なんとも珍しい。
品の良さそうな御婦人が、駅前に座っていたら声を掛けてきた。
御婦人は
「なぜ、このようなことをされているの?」と聴いてきた。
ボクハ
「今は面白いからですね。最初は『やってみたい』から始めたんですが。今では毎日、ここに来ずにはいられない感じです。」
と答えた。


話すことは「放す」こと

御婦人は
「そうなのね。でもこうやって人と話すのって大切よね。私も◯◯◯ってご存知? 福岡でその団体の立ち上げをやったり、様々なグループに所属して、対話したり聴くことの重要さはよく感じているの。やっぱり、人と話すことは『放す』ことだ、と心理学的にも言われるくらいですものね。」
そんなことを話した。


齢80を超えて、なお前へ

正直、このような御婦人が声を掛けてくることはなかったので、素直に聴いてみた。
「ぼくに話しかけるの、抵抗なかったんですか?」
御婦人は
「私も齢(よわい)80も超えてるし、たくさんの人と接したり、全国を飛び回って市民活動をしてきたりと……特に抵抗はなかったのよ。むしろ、今週末には佐賀を離れるから、何回も見かけていたあなたと話してみたいと思ったの。」
そんなことを話した。
齢80を超えてる!! ボクハびっくりした。
やはり、活動的な方というのは声に張りがある。そして、突っ込んでくる若さが在る。
思わず
「このような御婦人に話しかけてもらえるのは、素直に嬉しいですね。」
と伝えていた。
自分のおばあちゃんに近い世代の方と、こうやって話せるのはなにか来るものがあった。
それから、佐賀がいかにいい感じか。福岡市がいかに残念か(笑)。
今関わっている市民活動のこととか。
引き出しの多い御婦人だった。


おカネ箱、1000円 in

話の流れで「おカネ箱」のことになり、ボクハこれは出し入れ自由でおカネの実験をしてるんです、と伝えた。
すると
「面白いわね。これからどうなっていくか楽しみ。」
と、柔軟性の在る方だなぁと思った。
一通り話して、周りが高校生だらけになって騒がしくなってきたので、御婦人は
「それでは御暇しますね。またお見かけしたらお声がけするね。」
とおカネ箱に1000円を入れて去っていった。


意地悪な質問、はじめます

話している様子を隣で見ていたであろう男子高校生が
「以前も話したんですけど、おカネほしいです!」と言ってきた。
ボクハ、昨日Oさんやじゅんちゃんからこのおカネ箱に入れてもらって。
なんとなく
「無条件で渡すのはなんか面白くない。」と思ってしまった。
思ってしまったが最後、あとはやるしかない。
性格最悪のボクは、高校生が嫌気がさすぐらい質問してやろうと思った。


欲望と問答

まず
「なんでおカネ欲しいの?」
すると
「お腹すいたんです! 腹減って死にそうです! でも、金がなくて。」
ボクハ
「なんでおカネがないの? そして、俺から貰う必要があるの?」
と聴いた。
男子高校生は戸惑いながら
「えーーーと。親からだと今家にいないし、じいちゃんばあちゃんからももらえないし。今どうしても腹減ったんです!」
その気持ちはわかる(笑)。
と内心思いながら、さらに質問した。
「もらう以外に稼げば良いんじゃないの?」と聴くと。
隣の友達が援護射撃で
「バイトは学校から禁止されてるからできないんです。」と言ってくる。
ボクハそんなしょぼい理由じゃ聴かないぜ、と思いながら。
「バイト以外は? おカネ稼ぐ方法なんていくらでもあるじゃん。」
と、書いててもかなり意地悪だなと思う問いを投げた。
彼らは
「えーー。バイトしかなくないですか? おカネ稼ぐ方法って。」
と言うから。
ボクハ
「いやいや。この世界のおカネ稼いでる人、全員バイトじゃないでしょ。」と返す。
彼らは
「いやーー。高校生はバイトしか無いですよ。」と食い下がる。
ボクハ
「本当に? もっと考えてみなよ。俺に教えてくれ。」とさらに返す。
彼は
「うーん。YouTubeとか、TikTokとか? あとライブのスパチャとか!」と答えた。


欲望の勝利

ボクは、その後も意地悪な質問を繰り返し、なかなか挫けないから大したもんだなと思って聴いてみた。
「ここまでやりとりしてみて、どう?」
彼は
「いやーー。めっちゃ聞かれるなと思いました。」と応える。
ボクハ
「いや、そうじゃなくて。もっとムカつくとか色々あるんじゃないの?」と伝える。
すると
「え? もう正直に言いますよ? めっちゃウザいと思いました!」
素直でよろしい。
ボクハ
「OK。そんじゃ1000円渡すわ。気持ちよく使って食べてくれ。」
彼は喜んでファミマに買いに行った。
彼の欲望の勝利だ。
ぼくも、いい人をせずにそのまんまの意地悪ができてスカッとした。


巡りは早い

おカネ箱は、1000円 in の 1000円 out。
巡りが早い!
引き続き、駅前でおカネの実験していくぞ。


細川亮

細川 亮(ほそかわ りょう)
「みえるか企画」代表。「人間臭さ、歓迎。」をスタンスに、「一番痛い本質」に光を当てる「鏡」としての「問いかけの人」。
2022年、PCの文字を読む能力を失ったことを転機に、「見えないからこそ、見える世界」の探求を本格化。五感を開き「余白」を生み出す「ゆるコーヒー講座」は、佐賀県教職員互助会などからの依頼を受け開講され、累計250名以上が受講。
また、これまでのすべての活動を通じた累計1,000人以上にのぼる対話経験を活かし、1on1で「本質的な問い」と向き合う新企画「哲学対話-Takibi-」を2025年11月に始動。
著書に『みえるか Vol.1 便利は幸せなのか。不便は不幸なのか。』(武雄市図書館でのトークイベント登壇など)。「便利さ」や「生産性」が追求される現代社会に、根源的な問いを投げかける。
SAGAローカリストアカデミー2025選出。SAGA2024全国障害者スポーツ大会 陸上競技100m銀メダリスト。

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