質屋って知ってる?~江戸時代から続く”預ける”文化と新しい活用法~

仕事

皆さんは、「質屋」を利用したことがありますか?

いま街を歩けば、買取専門店やリサイクルショップの大手チェーンがあちこちに並び、さらに、アプリを使った個人売買もすっかり身近になりました。

使わなくなったものを売ってお金に変える——。
そんな“モノを手放す習慣”が広く浸透しています。
「断捨離」という言葉が流行したことで、
ますます“売る文化”が日常になってきました。

けれど、日本人にはもともと「モノを大切にする」心が根づいています。
長く使うこと、思いを込めること、受け継ぐこと——。
それは、単なる“所有”を超えた、文化そのものかもしれません。

モノが溢れるこの時代だからこそ、
“売る”でも“捨てる”でもない、
“預けて活かす”という知恵が、これからのサステナブルな暮らしに
求められているのではないでしょうか。

このコラムでは、そんな「質屋」という業種にスポットを当て、
佐賀市開成で質屋業を営まれている
有限会社ニューポーン 代表取締役 古賀愛基さんにお話を伺いました。

江戸時代から脈々と続く質屋文化

質屋の歴史は古く、実は鎌倉時代にはすでにその原型が生まれていたと言われています。
そして、庶民の暮らしの中で大きく発展したのが江戸時代でした。

当時の江戸の町には、数千軒もの質屋が並んでいたとされます。
質屋は「ものを預けてお金を借りる」仕組みで、生活の一部としてごく当たり前の存在でした。
給金日前のつなぎや急な出費の時など、庶民にとっては頼れる“身近な金融”だったのです。

しかし、質屋は単にお金を貸す場所ではありませんでした。
預けられた品物には、その人の暮らしや思い出が詰まっています。
質屋は、そんな「人の想いが宿るもの」を丁寧に預かり、
持ち主がまた迎えに来る日を信じて、大切に保管していました。

そこには「モノを通じた信頼関係」がありました。
お金のやりとり以上に、人と人との心のつながりが重んじられていたのです。

つまり、質屋は**“モノを通して人を支える文化”**として、江戸時代の人々の暮らしを陰で支えてきました。
そしてその文化は、形を変えながら現代にも受け継がれています。

手軽に、安心して利用できる“質屋”という選択

突然の出費、給料日前のつなぎ、思わぬ物入り——。
日々の暮らしの中で、急にお金が必要になることは誰にでもあります。

「銀行から借りるほどではないけれど、少しだけ必要」
そんなとき、銀行や消費者金融に頼るのは少しハードルが高いもの。

そこで、もうひとつの選択肢として注目したいのが「質屋」です。

佐賀市開成で質屋業を営む有限会社ニューポーン・古賀愛基社長は、
「質屋は“お金を借りる”という感覚とは少し違うんです」と話します。

質屋とは、モノを担保に資金を融通する仕組み。
しかし、融通されたお金を必ず返済しなければならないわけではありません。
消費者金融のように「返済義務」が発生するのではなく、
あくまで“預けた品”を取り戻す場合にのみ、元金と利息を添えて支払うのです。

つまり、質屋では「返さなければならない」というプレッシャーがありません。
必要なときに、安心してお金を手にすることができるのです。

もし預けた品が大切なものであれば、
後から元金と利息を支払えば品はきちんと戻ってきます。
さらに、返済期限の延長もできるため、
元金をすぐに用意できなくても、利息だけ支払えば「質流れ」になる心配もありません。
その間、品物は質屋で大切に保管してもらえるので安心です。

質屋とは、“手軽で安心して利用できる”生活の知恵。
現代の暮らしにこそ、もう一度見直したい仕組みなのかもしれません。

有限会社ニューポーン
古賀 愛基(よしき)社長

質屋は“目利き”――品を見て、人を見て、信頼を預かる

リサイクルショップなどにモノを売りに行ったことがある方も多いでしょう。
ショップのスタッフさんは丁寧に査定してくれますが、
そこにあるのは「品物」と「市場価値」を見定める目。

一方、質屋では少し違います。
もちろん「品」を丁寧に査定して金額を提示するのは同じですが、
その人自身をしっかり見るのだそうです。

その人がどんな思いでその品を持ってきたのか。
どれだけ大切にしてきたのか。
それによって査定額が変わることもあるといいます。

実際、1,000円ほどの価値しかない品でも、
「3,000円必要なんです」と言われれば、
3,000円を融通することもあるそうです。
それは、品に対してではなく、“人に対して融通する”――
いわゆる「信用貸し」と呼ばれるもの。

逆に、3万円ほどの価値がある品でも、
「後で引き取るのが大変になるから」と
必要な分だけを勧めることもあるそうです。
それもまた、相手を思っての提案。

質屋とは、単に“品の価値”を見極める仕事ではなく、
“人の想い”を汲み取る仕事。
そこには江戸時代から受け継がれてきた、
人と人との信頼と人情が息づいています。

まとめ

「品」には、その持ち主の思いがこもっています。
代々受け継いできた大切な品や、
大事な人から贈られたかけがえのない品——。

それでも、どうしてもその品を担保にお金を融通しなければならない時、
質屋はその人の思いに、そっと寄り添ってくれます。

その品に込められた大切な気持ちを、
安心して保管するという形で守ってくれる場所。

その品が持ち主にとってどれほど大切かを、質屋はきちんと理解しているからです。

質屋とは、700年もの間、庶民の暮らしを支えてきた金融文化。
人と人との信頼の上に成り立つ、
日本ならではのあたたかい仕組みなのです。

だからこそ、安心して利用できる。
そして、いざという時の頼れる存在でもある。

大切な品、でも急に用入り。
そんな時は、ぜひ「質屋」という選択を思い出してみてください。
そこには、“モノ”だけでなく“心”を預けられる安心があります。

お店情報

名前|ニューポーン
場所|佐賀市開成6丁目5番29号
電話|0952ー32ー2222
定休日|毎週木曜日

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