※このコラムは、空手指導の現場から見えた「教えることの本質」を、子育てにも重ねて綴っています。
新年あけましておめでとうございます。
本年も、相変わらずではありますが、勝手に教育論を呟いてまいります。
よろしければお付き合いいただき、
そして、どこか一節でも共感していただけたなら幸いです。
子ども達を指導していく中で、
「どれだけ子どもの目線に立てているか」
この問いは、常に自分自身に投げかけているテーマです。
それほどまでに、子どもの目線に立つということは簡単ではありません。
そもそも、大人と子どもは、
考える力も、考え方も、まるで違う生き物だと言っても過言ではないでしょう。
その大きな違いをどう埋め、どうすれば“伝わる指導”へとつなげていけるのか。
これは、指導者にとって非常に重要な課題だと感じています。
ご家庭でも、
ついお父さんやお母さんの考えを、そのまま子どもに押し付けてしまう——
そんな話を耳にすることがあります。
けれど、その言葉は本当に子どもに届いているのでしょうか。
今回は、道場で日々子ども達と向き合う中で、
自分がどのように「伝える」ことを意識し、工夫しているのか。
改めて自分自身を振り返りながら、書いていきたいと思います。

教えるとは、示し続けること
子ども達を指導する中で、
「子ども達の目線の高さに合わせて指導することが大切だ」
そう言われることはよくあります。
しかし実際には、その“目線の高さ”を見極めること自体が、とても難しいと感じています。
空手の技術は、もともと大人でも理解が難しいものです。
それを子ども達に分かるようにと、言葉を噛み砕き、簡単に説明すればするほど、
本来伝えたかった“本物”から、少しずつ離れていってしまうことがあります。
言葉を簡単にすればするほど、
本当に伝えたい核心から遠ざかってしまう。
その塩梅が、指導において最も難しい部分だと感じています。
だから私は、
「子どもに分かるように噛み砕いた言葉」ではなく、
できる限り、本来使うべき言葉そのままで伝えることを意識しています。
ただし、それが成立するためには、いくつかの条件があります。
一つ目は、必ずお手本を見せることです。
言葉だけでは理解できなくても、
子ども達は、私の動きを見て、少しずつ意味を掴み始めます。
目で見て、身体で感じることで、言葉が後からついてくるのです。
二つ目は、何度も何度も繰り返し伝えることです。
道場での空手道修練は、何年にもわたって続いていきます。
学校のように「この期間で、これを身につけなければならない」という制限はありません。
だからこそ、同じことを何度も伝え、
時間をかけて、理解を深めていくことができます。
この二つの条件が揃っていれば、
たとえ今は難しく感じる言葉であっても、
時間とともに理解は深まり、やがて身体に染み込んでいくものです。
限られた期間の中で、
しかも言葉だけで技を伝え、習得させようとすること自体、
本来とても無理のあることなのかもしれません。
古賀道場の稽古では、
師範である私自身も、子ども達と一緒に身体を動かします。
指導者だからといって、腕を組んで立ち、声だけで指示を出すことはありません。
それは、古賀道場が所属する和道流空手道連盟の最高師範である
宗家・大塚博紀先生の指導法そのものだからです。
宗家は、稽古の中で誰よりも身体を動かし、
常に我々に手本を示してくださいます。
自らが動き、示し続ける。
それができてこそ、本当の指導者なのだと私は思います。

自分自身が手本を示せない指導者、
あるいは、自分の上達を弟子に示すことができない指導者では、
口伝だけの指導になってしまい、本物の技を伝えることは難しいでしょう。
ましてや、弟子よりも技量が劣っているようでは、
指導そのものが成立しません。
家庭でも道場でも変わらない指導の本質
ここまで空手の指導について書いてきましたが、
これらはすべて、ご家庭での子育てにも当てはめることができます。
子どもに理解してもらいたいことを、
子どもの目線で考えること。
そして、それが伝わるまで、
何度も何度も、根気よく伝え続けること。
さらに、何よりも大切なのは、
大人が手本を示すことです。
不思議なもので、
家族で過ごす時間が短くなったと言われる現代においても、
子ども達の身のこなしや話し方は、
驚くほど親御さんに似ていきます。
「子どもは親の背中を見て育つ」
この言葉は、決して古い教えではなく、
今の時代だからこそ、より深く感じる言葉だと思います。
親御さんが日々の生活の中で、
言葉だけでなく、行動で示し続けることができれば、
特別なことをしなくても、
子ども達はごく自然に、良い方向へと育っていくのではないでしょうか。
さいごに
私は、子どもが健やかに成長していくために最も大切なのは、
ご家庭・学校教育・地域、
この三つがバランスよく関わり合うことだと考えています。
この三角形のトライアングルの中で、
子ども達は安心し、守られ、そして大きく育っていくのです。
その中でも、最も重要な役割を担っているのは、
言うまでもなく「ご家庭」です。
古賀道場では、
子ども達をどこへ、どのように導いていくのかという指針を、
理念という形で明確に定め、日々の指導を行っています。
そのため、指導に迷いやブレはありません。
これは、家庭での子育ても同じだと思います。
すべての保護者の方が、
「子どもをどのような大人に育てたいのか」
「そのために、どのような教育をしていくのか」
この軸を明確に持つことができれば、
子ども達は、無理に引っ張られることなく、
自然と、すくすくと、まっすぐに育っていくものです。

子育てや、お子さんの教育に不安を抱えていらっしゃる保護者の皆様へ。
どうか、自分たちは「親」であると同時に、
お子様にとって、かけがえのない唯一無二の教育者である
という自覚を持ってみてください。
その意識を持つだけで、
これからのお子様への関わり方、教育のあり方は、
きっと少しずつ変わっていくはずです。

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